遺産分割されていないときの相続税の申告

相続とは?

家族や親族が亡くなった場合、その相続人となっている人が、亡くなった人が生前に持っていた権利や義務を引き継ぐことになります。これが相続ですが、配偶者や子供、兄弟姉妹など、複数の人が相続人としての資格をもっていることが多くみられます。この場合、民法の規定にそのまましたがって、亡くなった人からの親疎の順にしたがい遺産を相続することも可能ですが、相続人全員が集まって遺産分割協議をして、誰がどのような遺産を受け取るかを決定することのほうが一般的といえます。

遺産分割と相続

ただし、このような協議にもとづく遺産分割は、相続人全員の同意があることが前提ですので、場合によっては相続人同士で内容をめぐる争いが起こり、なかなか遺産分割ができないこともあります。この場合の相続税の申告と納付ですが、遺産分割がされていないからとっても、税法上の原則はしっかりと守らなければなりません。税法上、被相続人が死亡したことを知った日を基準にして、その翌日から10か月以内に、管轄している税務署への申告をしなければならないことになっています。分割されていないことを理由として、相続税の申告期限が延長されることはありませんので、通常、このような場合には、それぞれの相続人が、民法に規定されている相続分にしたがって遺産を取得したものと仮定した上で、税額の計算をする必要があります。

注意しなければならないのは、相続税が実質的に減額となる、各種の特例が利用できなくなってしまう可能性があることです。たとえば、亡くなった人の配偶者には、遺産分割や遺贈によって取得した正味の遺産の金額が一定以内の場合には相続税がかからない、配偶者の税額の軽減の仕組みがあります。また、亡くなった人がマイホームとして住んでいたり、事業のために利用していた宅地などについては、限度面積の範囲内で一定の割合が減額される、小規模宅地等の特例と呼ばれる仕組みがあります。これらは遺産分割が行われて、誰が所有者になるのかがはっきりしているものに対して適用されるため、分割がされていない状態で申告の期限を迎えてしまった場合には、せっかくの大きなメリットがある仕組みの恩恵を受けられなくなってしまいます。

ただし、相続税の申告にあわせて、申告期限後3年以内の分割見込書と呼ばれる書類を添付することによって、将来的に、これらの特例の適用が受けられる制度も存在しています。これは申告の期限から3年以内に分割があった場合について、さかのぼって特例の適用を受けることができる仕組みです。この場合、分割が行われた日を基準に、その翌日から4か月以内に、税務署に対して更正の請求をすることによって、特例を適用しなかったために払い過ぎになっていた相続税が還付されます。なお、分割ができない事情として、他の相続人から民事裁判が提起されているなどの特別な事情がある場合には、これとは別に、税務署から特別な承認を受ける方法があります。